前回のダイヤモンドの審美眼の続きのそれぞれの項目ですが、1つ目は美しさです。
美しさ
「審美眼」は、正にこの「美しさ」を見極めることから始まります。
では、ダイヤモンドの美しさとは、何で決定されるのでしょうか?
「輝き」、「透明度」、「蛍光性」、「カット」etc. 色々と挙げることができますが、
ダイヤモンドの美しさは、その結晶の質で決定されています。
そして、その美しさを引き出すのが、人間の研磨技術です。
ダイヤモンドの結晶は、その性質によって3種類に分類されます。
- ソーヤブル
2つのピラミッドを正八面体に代表される原石。
透明度が高いのが特徴で、宝石用の原石の10~20%しかなく、効率よくカットできる貴重なもの。
- メイカブル
形は様々ですが、ダイヤモンドの原石としては中級のもの。
それぞれの形に合わせてカットされますが、良質に仕上がるものもあれば、低品質なものが生まれることもあります。
- ニアジェム
本来は工業用のダイヤモンドの原石で、透明度に欠け、大きなインクルージョンや亀裂の多いものがほとんどです。
研磨されても美しい輝きはほとんど見られません。
ダイヤモンドの輝きは、「ダイヤモンド上に3次元的に現れる光学的な現象」と言い換えることができます。
この輝きは、「ブリリアンシー」、「シンチレーション」、「ファイヤー」と呼ばれる3種類の光の現象によって生み出されています。
「ブリリアンシー」とは、ダイヤモンドの強い輝きです。
薄暗がりの中や、遠くからでも、小さなダイヤモンドが強く光っているのを見た経験は必ずあることと思います。
「シンチレーション」とは、ダイヤモンドの表面で光がちらちらと動いているように見える現象のことです。
ダイヤモンドは、まるで、生命を持っているかのようにきらきらと輝きます。
「ファイヤー」とは、無色のダイヤモンドの中に赤色や青色の虹色の光が見られる現象のことです。
ダイヤモンドの輝きを華やかに彩ります。
ダイヤモンドの美しさは、この3つのバランスによって決定します。
このバランスは、ダイヤモンドによって異なります。
例えば、ダイヤモンドの1つ1つのファセット面を大きくすると、ブリリアンシーは強くなります。
しかし、シンチレーションは弱くなります。
また、ダイヤモンドの内部に、大きな内包物があると、ファイヤーに影響を及ぼしたり、ブリリアンシーが弱くなったりします。
言葉だけでは分かりにくいですが、実際に品質の高いいダイヤモンドを手にとって見るとよく分かります。
まず、蛍光灯等の明かりの下で見ると、強い輝きが見られます。
ワイングラスを揺らすようにダイヤモンドを回すと、光の輪がきらきらと円周にそって動きます。
次に、明かりから離れて少し暗いところ(テーブルの下等)で見ます。
やはり、強い輝きが見られます。同じようにダイヤモンドを回します。先程と同じ現象が見られます。
明るいところでは輝いていたけど、暗いところでは輝きが失われたり、
光の輪がきれいに1周せずに、どこかでひっかかったりする。
その程度によって、美しさが損なわれていきます。
ここに厳密な等級付けはできません。
美しさは常に主観の入るものなので、明確な線引きはできないからです。
ダイヤモンドの美しさに絶対的なものがあると思い込んでいる方もいるかもしれませんが、
自然の創った宝石に、絶対的な美しさというものはありえません。
このダイヤモンドの美しさを科学的に分析しようと、学者たちは研究を続けています。
私自身も挑戦したことがありますが、「美」を測定するということは想像以上に難しいものです。
「色の濃淡」、「欠点」、「サイズ」がそれぞれ関連し、その関連の仕方によって、結果が異なることもあるのです。
つまり、分析データ上では、最高の結果を示しているのに、実際に見るとそうでもないという場合があるのです。
大切なことは、1つ1つの要素を分析するのではなく、全体を見て総合的に判断することで、これは人間の眼にしかできないことのようです。